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最高裁判所第一小法廷 昭和26年(オ)518号 判決 1959年3月26日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人弁護士三原道也の上告理由第一点について。

上告人後藤角蔵を除くその余の上告人ら及び第一審被告佐々木ミサコ、以上六名が共有者であるとの主張の下に本件不動産につきなされた原判示贈与契約の無効確認を求める本訴請求は、右共有者全員に対し合一にのみ確定すべき必要的共同訴訟と解するを相当とするところ、右佐々木ミサコは第一審訴訟の進行中である昭和二四年一二月五日死亡し、その訴訟代理人であつた弁護士坪池隆の代理権は第一審限りであつた為め第一審判決正本が右代理人に送達されるとともに訴訟手続は中断となり、この中断は右共有者全員についてその効力を生じたものと解すべきことは、所論のとおりであり、また、右佐々木ミサコには夫である佐々木繁夫及び実母である佐々木スエノ(本件上告人の一人)の両名の相続人のあること、右両者又はその他の者から右中断後何ら受継の為めの手続がとられていないこと、また、右中断中に上告人らは弁護士坪池隆に対する訴訟委任状(前示佐々木ミサコも委任者の一人として記載されている)とともに本件控訴状を提出の上原審における一切の訴訟行為をなし、かくして控訴棄却の判決をうけ本件上告申立に及んだものであることは本件記録に徴し明らかである。論旨は原審に提出された右委任状中佐々木ミサコとある部分は死者名義のものに係りそれ自体無効のものであるばかりでなく、本件控訴は右訴訟手続の中断中に右相続人らから何ら受継の手続がとられないままに提起されたものであるから無効であり、その後の原審における上告人らの訴訟行為もすべて同断であると主張するのである。

思うに訴訟手続が必要的共同訴訟人の一人の死亡により中断となつた本件のような場合に、その中断中に他の共同訴訟人によつてなされた控訴申立その他の訴訟行為が無効に帰すべきことは所論のとおりである。しかしながら右死亡者について受継手続をなすべき者が他の共同訴訟人の中に在りながら何ら受継についての手続をとらないままに控訴申立を始め控訴審における一切の訴訟行為をなした前示のような場合においては、共同訴訟人らは上告審において自ら控訴審における自分らの訴訟行為の無効を主張することは訴訟経済上からもまた訴訟信義の上からも許されないところと解するを相当とする(大審院、昭和一四年九月一四日第一民事部判決、民集一八巻一〇九一頁以下、参照)。そしてこのことは所論委任状の中に死者の名義が記入されていたからといつて結論を異にするものではない。

所論縷述の要旨は叙上と相容れない見解に立脚するものであつて、採るを得ない。

なお、本訴は叙上上告人らと上告人後藤角蔵との間に合一にのみ確定することを必要とする訴訟とは解し難いから前示佐々木ミサコが死亡しこれに基いて訴訟手続の中断を生じても、その効力は上告人後藤角蔵に及ぶ筋合ではないから、同上告人に関する限り所論は叙上と別箇の理由において採用できない。

同第二点について。

論旨は原審の専権に属する証拠の取捨判断及びこれに基いてなされた自由な事実認定を非難するだけのものであつて、結局「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号ないし三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法律の解釈に関する重要な主張を含む」ものとも認められない。

よつて、民訴三九六条、三八四条一項、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 高木常七)

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